【2019.07.23up】

 7月23日、現在立候補を表明している3人の方々の事務所を訪問し、公開質問状をお渡ししてきました。左から、大野元裕さん、青島健太さん(代理の方)、行田邦子さんです。たいへんご多忙のところ、面会していただきましてありがとうございました。ご回答を楽しみにお待ちしています。

ジェンダー平等についての公開質問状

 

ジェンダー平等 埼玉

 

 時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。

 私たち「ジェンダー平等 埼玉」は、埼玉県のジェンダー平等推進に関心を持ち、またそのために活動している個人と団体のネットワークとして、今回の知事選をきっかけにつくられたグループです。

 現在、ジェンダー平等は、社会全体の持続可能性に深く関わるものという認識が世界的に広がっています。しかし、日本はOECDに加盟し、サミットを開催する先進国でありながらも、ジェンダー平等の立ち遅れが著しい国です(世界経済フォーラムによる2018年のジェンダーギャップ指数ランキングでは149カ国中110位)。

 このような日本社会において、埼玉県は、男女共同参画社会基本法制定の翌年である2000年に、全国に先駆けて男女共同参画推進条例を制定し、男女共同参画行政を進めてきました。DV防止計画を策定する自治体は他県に比較して多く、埼玉県男女共同参画推進センター(With Youさいたま)では、毎年、先進的な事業が展開されています。

他方、埼玉県は、質問にも書きましたように、女性にとって仕事と家庭の両立が困難な県です。また、女性の非正規雇用比率も全国水準より高い値を示すというように、重要な課題は解決されないままとなっています。

この度の埼玉県知事選挙にあたり、私たちは、有権者の方々に選択の一助としていただくため、候補者のみなさまが、ジェンダー平等の推進についてどのようなご意見、政策をお持ちかを伺うべく、別紙のとおり公開質問をさせていただくことにしました。主要立候補予定者の方々のウェブサイトを拝見しましたが、この点についての言及がみられなかったためです。ぜひ、ご回答をお願いします。

 

 いただいたご回答は、そのままインターネット上に公表いたします(締め切りまでにご回答がいただけなかった場合には、そのことを公表させていただきます)。締め切りを、7月29日とさせていただきました。ご多用中とは存じますが、どうかよろしくお願い申し上げます。

 

「ジェンダー平等 埼玉」呼びかけ人(五十音順);

(省略)

    

公 開 質 問

 

 下記について、埼玉県知事としてのお考えをお聞かせください。それぞれ、300600字程度でお願いいたします。

 

 

(1)ハラスメント防止について

 昨年から今年にかけて、セクシュアル・ハラスメントやパワーハラスメントが、国内外で大きな話題となってきました(注1)。この課題にどのように取り組みますか? 県庁、小中高校、事業主、県民、それぞれに対する取組について、お考えを聞かせてください。

 

 ここから!

 

(2)男性の育児休業取得について

 日本では、男性の育児休業取得がなかなか進まない現状があり(注2)、取得率向上に向けたもう一段の取組みが必要だと言われています。今後、取得率を大きく増やすために、どのような取組みが必要だと考えますか?

 

★私たちの質問は、単に取得を増やすということではなく、「長期的に取得が進まない現状」を踏まえて、「大きく増やすための取り組み」について尋ねていますので、提示された手立てによって、「本当に大きく増やせる回答かどうか」が、ポイントになります。 ここから!

 

(3)「子どもの貧困」の解消について

 国は、2013年に「子どもの貧困対策の推進に関する法律」を制定し取り組みを進めていますが、埼玉県では、「貧困の連鎖解消に向けた」取り組みとして、子どもの居場所作り、学習支援、支援者養成などを中心に施策を展開しています(注3)。こうした県の取り組みについての評価をお願いします。また、県のさらなる取り組みとして、どのようなものが考えられるでしょうか? 具体的に教えてください。

 

★「ジェンダー平等の推進」を掲げる団体が、どうして「子どもの貧困」について質問しているの?ーと思う方もあるかと思います。どうしてなのか、ぜひ候補者の回答と解説をお読みください。 ここから!

 

(4)女性の就業/埼玉版ウーマノミクスについて

 埼玉県は、女性の労働力率を示すM字カーブの谷が全国的にみて深く、就業を希望する女性が多い状況が続いています。また、女性就業者に占める非正規雇用率は6割を超えており、働く女性の多くが、非正規雇用という不安定な雇用となっているのが現状です(注4)。埼玉県は、2012年(平成24)年から、産業労働部に「ウーマノミクス課」を設置して取り組みを進めています(注5)。この取り組みについての評価と今後進めるべき施策について教えてください。

 

 ここから!

 

(5)DV防止及び、DV被害者支援について

 DV防止法制定から20年になろうとしていますが、デートDVに端を発する殺人事件や、DVと児童虐待が重なる深刻な事件が止みません。DV防止及び、DV被害者支援について、それぞれ、現在最も重要なことはどのような取り組みだと考えますか?

 

 ここから!

 

(6)性暴力被害者支援について

 埼玉県は、国が進めてきた全都道府県での性暴力被害者のためのワンストップセンターの設置に対応して、「埼玉県性暴力等犯罪被害専用相談電話アイリスホットライン」(注6)を開設しています。しかし、これまで県議会でも、アイリスホットラインは基本的には電話相談であり、面接や寄り添い型の支援については十分ではなく、24時間365日対応できる病院拠点型センターへの移行が課題だとされてきました。この指摘に対し、6月議会で、県は、「現状では、相談センターを中心とした連携型が適したものである」と答弁しています(注7)。この課題を解決するために、今後、どのように取り組んでいきますか?

 

 ここから!

 

(7)セクシュアル・マイノリティ/SOGI(注8)の課題について

 この間、セクシュアル・マイノリティについての施策を打ち出す自治体が増えています(注9)。日本は、先進国の中でも、この課題について立ち遅れていますが、セクシュアル・マイノリティの人権保障について、どのような施策が必要だと考えますか?

 

 ここから!

 

(8)県庁の女性管理職比率の改善について

 埼玉県職員の女性管理職比率は、現在9.6%(副課長級以上)で、女性職員割合39.7%と比べて著しい隔たりがみられます(注10)。しかし、現在のところ、県は、女性活躍推進法に基づく特定事業主行動計画でも、女性管理職について明確な数値目標を掲げていません(注11)。こうした現状をどう考えますか? また、埼玉県においてジェンダー平等を進めていくために、複数ある副知事職に女性を登用する意志はありますか?

 

女性管理職が少ないことは、現在働く女性たちが強いられている状況について、それを変えようとするチャンスも増えないことを意味するのではないでしょうか? 土屋県政に続き、上田県政でも、女性の副知事を置き、また、重要なポジションに女性職員を置きました。次の埼玉県政では、どうなるのでしょうか? ここから!

 

(9)埼玉県防災会議の女性委員について

 埼玉県防災会議の女性委員数は8人(11.6%)(注12)と、全国的にみて低い状況が続いています(注13)。防災会議の女性委員の問題は、避難所などの災害被害の現場において女性特有のニーズが気づかれにくいなど、意思決定場面に女性をはじめとする多様な人々が参画しなければならないことを教えてくれる重要な事例となっています。今後、防災会議の女性委員を増やしていくために、どのような取組みが必要だと考えますか?

 

★私たちの質問は、上記のように「県防災会議に女性委員を増やすためには、どのような取り組みが必要ですか?」というものです。したがって、単に「増やす必要があります」という答えでは、私たちの質問に答えたことにはなりません。さて、3人はどのような回答をしてきているでしょうか? ここから!

 

10)県立高校の男女共学化について

 公立高校の男女共学化は、戦後全国で進められてきましたが、2018年に98.4% になりました。しかし、埼玉県は、現在でも男女別学の公立高校が10校以上あり、群馬県、栃木県とならんで、別学校が残っています(注14)。埼玉県公立高校のこうした状況をどのように考えますか?

 

★私たちの質問は、タイトルは「共学化について」としていますが、高校に男女別学校が残っている埼玉県の状況についての考えを尋ねるものです。ですので、比較的自由度が高いもの(「共学化」の是非を問うわけではない質問)と考えることができるのですが、どんな回答が得られたでしょうか? ここから!

 

11)ジェンダー平等の推進についてこの他に何かお考えがありましたら、ご自由にお書きください。

 

 ここから!

 

 

(1)昨年4月に発覚した財務省事務次官によるテレビ朝日の女性記者へのセクシュアル・ハラスメントを契機として、国により緊急対策の策定が行われ(20186月)、また、本年6月に開催された第108ILO総会では、「仕事の世界における暴力とハラスメント」条約の採択が行われた。

 

(2)国の目標値は、2020年までに13%であり、埼玉県の目標値は、2020年度末までに15.0%となっている。現状は、民間企業5.14%、国家公務員10.0%、地方公務員4.4%(平成292017)年度の割合。『2019年版男女共同参画白書』)。埼玉県職員については、13.6%である(平成29年度。「平成30年度版 男女共同参画に関する年次報告」)。

 

(3) https://www.pref.saitama.lg.jp/a0607/shoushi/kodomoshokudou.html

 

(4)「平成30年度版 男女共同参画に関する年次報告」

https://www.pref.saitama.lg.jp/a0309/danjyo-nenjihoukoku/documents/30-1.pdf

 

(5)埼玉県産業労働部ウーマノミクス課

https://www.pref.saitama.lg.jp/soshiki/a0810/index.html

 

(6)「埼玉県性暴力等犯罪被害専用相談電話アイリスホットライン」

http://www.pref.saitama.lg.jp/a0311/hanzaihigaisya/seibouryoku2.html

 

(7) 「令和元年6月定例会 一般質問 質疑質問・答弁全文(秋山もえ議員)」

https://www.pref.saitama.lg.jp/e1601/gikai-gaiyou/r0106/f060.html

 

(8)近年、この課題は、セクシュアル・マイノリティの課題として捉えるだけではなく、すべての人にみられるものとしてのSOGI=Sexual Orientation/Gender Identity;性的指向/性自認)に関わる人権課題のなかで、特定のSOGIの人の権利が侵害されている問題として捉えることが必要だとされている。

 

(9)セクシュアル・マイノリティの人権と差別禁止について明記した条例を策定したり、同性間のパートナーシップを認証する自治体が、都道府県レベルでも現れている。

 

(10)「平成30年度版 男女共同参画に関する年次報告」

https://www.pref.saitama.lg.jp/a0309/danjyo-nenjihoukoku/documents/30-1.pdf

 

(11)「埼玉県女性活躍・子育て応援事業主プラン~埼玉県特定事業主行動計画~」(平成284月)

https://www.pref.saitama.lg.jp/a0201/jisedai/documents/josei-kosodate-plan.pdf

 

(12)「地方公共団体における男女共同参画社会の形成又は女性に関する施策の推進状況(平成30年度)」「都道府県・政令指定都市編(埼玉県)」(平成31320日公表)

http://www.gender.go.jp/research/kenkyu/suishinjokyo/2018/pdf/tdk/11.pdf

 

 

(13)都道府県平均は15.7%(『2019年版男女共同参画白書』;http://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/r01/zentai/html/zuhyo/zuhyo01-04-05.html 

 

 

(14)2000年以降では福島県、宮城県が公立高校の全学男女共学化を実現している。現在男女別学が残る県は、群馬県13校(19.7%)、栃木県11校(18.6%)、埼玉県12校(8.6%)(2019年の募集要項から算出)となっている。 


【2人の有識者からのコメント】

 

大沢真理(東京大学名誉教授、元志木市民、新座市民)

 今回の公開質問状の項目は、入念に選りすぐられていると思われ、「ジェンダー平等 埼玉」の取組に大いに敬意を表したいです。公開質問状への回答は、公式の選挙公約(マニフェスト)ではないとはいえ、まさに公開された回答です。当選後の県政運営において、実施の責任を問われる項目といえるでしょう。

 全体に大野候補の回答には具体性があり、見習いたい他県の取組も意識されています。いっぽう青島候補の回答には、啓発周知に努める、という項目が多いようです。啓発はもちろん必要です。

 国のジェンダー平等にかかる国内行動計画は、1977年から策定されてきましたが、1991年策定の計画までは、「意識」の変革や改革が筆頭項目でした。これに対して、1995年の北京会議をへて、男女共同参画審議会などで、意識を制約する制度や慣行の重要性が議論されました。そこで1996年策定の男女共同参画2000年プランでは、ポジティブ・アクションが筆頭項目、次が社会制度・慣行の見直しとなりました(意識の改革はその枝項目)。

 21世紀も20年近くが過ぎながら、日本はジェンダー平等において国際社会で大きく劣後し、少子高齢化や経済停滞という問題を深刻化させています。啓発に止まらず、具体的な目標・工程表や組織を設けて進めることが、待ったなしで必要であることを、肝に銘じたいものです。

 埼玉県では新座市で、北京会議にも先立って1994年に、社会制度や慣行の問題を強く意識した「にいざ男女平等行動プラン」が、市民主導で策定されています。

 知事選挙の候補者の方々には、ジェンダー平等を目指す国や他県の取組はもちろん、県内での先駆的経験も、参考にしていただきたいですね。

 

 鹿嶋敬(一般財団法人女性労働協会会長(当時))  

 立候補者の皆さんが、ジェンダー平等関連の課題に前向きな定見をお持ちになることを、是非とも、と願っています。このような公開質問を、どこの知事選でも行うようになれば、問題意識もより明白なものになると思います。

 私は男女共同参画への関心の薄れ、特に若い世代の関心が今一つという現状を危惧していますが、そのような中、地方自治体も、特に固定的性別役割分担意識の解消をどう図るかに力点を注いで頂きたいと思っています。個人的なことを申し上げれば、私は、新聞記者時代は男女雇用機会均等法制定前後の取材、大学教員時代は男女共同参画基本計画の策定等に携わり、そして現在は女性活躍推進関連の仕事をしていますが、根っこにある共通課題は固定的な性別役割分担をどう揺り動かすか、だと実感しています。

 ほぼ半世紀、こうした問題に仕事としてかかわってきましたが、家庭や職場での性別役割分担(夫は仕事、妻は家事育児、男性は正社員、女性は非正社員)には依然、根強いものがあります。公開質問も男性の育児休業取得や女性の就業、管理職比率など、多くはその根底に性別役割分担の問題を秘めているだけに、知事を目指す皆さんには是非、関心を寄せて頂きたいと思います。