Q8について

ページの一番下に、解説をおきましたので、ぜひお読みください。

(8)県庁の女性管理職比率の改善について

 埼玉県職員の女性管理職比率は、現在9.6%(副課長級以上)で、女性職員割合39.7%と比べて著しい隔たりがみられます(注10)。しかし、現在のところ、県は、女性活躍推進法に基づく特定事業主行動計画でも、女性管理職について明確な数値目標を掲げていません(注11)。こうした現状をどう考えますか? また、埼玉県においてジェンダー平等を進めていくために、複数ある副知事職に女性を登用する意志はありますか?

 

(注10)「平成30年度版 男女共同参画に関する年次報告」

https://www.pref.saitama.lg.jp/a0309/danjyo-nenjihoukoku/documents/30-1.pdf

 

(注11)「埼玉県女性活躍・子育て応援事業主プラン~埼玉県特定事業主行動計画~」(平成284月)

 

https://www.pref.saitama.lg.jp/a0201/jisedai/documents/josei-kosodate-plan.pdf


大野候補

 管理職育成の視点からも、数値目標を設定することは必要だと考えます。女性の副知事登用についても、適任者がいれば選任します。

青島候補

 数値目標を掲げることは目標達成に向けて大変有効な方法だと思いますが、一方で、本末転倒になることもあります。副知事職の登用についても同様です。

 税金を原資に仕事をしている者は、その能力を最大限に発揮して県民生活の向上に尽力しなければなりません。

 まずは優秀な女性職員を一人でも多く育て、登用していきたいと考えます。

(参考)行田邦子さん

 埼玉県庁でも働き方改革を進めていくために女性管理職の数値目標を明確に掲げるべきです。一方で、政府が進める「2020年に指導的地位に女性が占める割合30%」の目標到達は、現在の職員総数や管理職総数が劇的に変わらないことを踏まえると、実現困難と言わざるを得ません。今後における人事管理面の改革推進施策と併せ、しっかりと数値目標を掲げていきたいと考えます。具体的には、時短勤務のマネジメント支援やメンター制度の導入、女性職員が少ない(=時間外勤務が多い傾向にある)企画部門や財政部門への配置、女性職員が受けづらいとされる昇任試験制度の見直し、家族の介護や傷病治療と仕事の両立支援など。女性管理職が増えるということは男性職員にとっても働きやすい公務職場になるということです。そのために、男女共同参画や人事管理を所管する副知事職に女性を登用することも検討してまいります。


【解説】

 国は、2003年に「社会のあらゆる分野において、2020年までに指導的位置に女性が占める割合を少なくとも30%程度とする目標」を掲げました(男女共同参画推進本部決定)。2020年は来年であり、この実現は困難であることは明らかなのですが、それでも、掲げた数値目標の実現に向けての努力が減速することがあってはならないと思います。そのための一つの工夫が、いわゆる「女性活躍推進法」という法律です。この法律では、民間企業だけでなく、国や地方公共団体についても、「事業主行動計画」を定め(その中で数値目標を掲げて、期限を切ってその実現を推進しなければなりません。いわゆる「ゴール&タイムテーブル方式」のポジティブアクションです)、「女性の活躍」を推進するよう求められています。女性の管理職比率は、数値目標として代表的なもののひとつといえるかもしれません(質問2で尋ねた男性の育児休業取得(率)も、重要な指標です。

 上は、2017年版の『男女共同参画白書』からのグラフです。都道府県を北から並べてあり、特徴を捉えようとしています。赤い点は目標値、棒グラフは課長相当職の女性割合の実態(2016年)です。2本の横線は、それぞれ国の目標値(青線)、2016年の全国平均(赤線)です。30%を掲げているのは三重県のみであること(直近の数値は、10.9%)。20%を実現している2つの都道府県の一つが鳥取県であること(直近の数値は、22.5%)など、注目されてよいのではないかと思います。

 また、少しわかりにくいのですが、目標値を定めていない都道府県があります。北から、青森県、埼玉県、愛媛県、宮崎県です。定める必要がないほど、女性管理職比率が高いかというと、そんなことは全くありません。これ以外に何か定めているのでなければ、法律違反になってしまうので、きっと、他で定めているのでしょう。どうしてこれらの県では、女性管理職について数値目標を定めないことにしたのか、とても気になります。

 女性の管理職割合について、数値目標を掲げて、増やそうとするこの試みは、実は、「働き方改革」の重要な一部です。上のグラフは、2019年版『男女共同参画白書』からのものですが、女性の管理職比率の状況を国際比較したものです(http://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/r01/zentai/html/zuhyo/zuhyo01-02-14.html)。日本と韓国が、顕著に低いことがわかります。そして、この14.9%しかいない日本の女性管理職ですが、この人たちー現在の日本社会の中で、女性で管理職になることができる人たちーとは、どんな人たちなのかといいますと、おそらく、その多くは、シングルであるか、配偶者がいても、子どもがいない人たち(いわゆるDINKs)です(JIPT「男女正社員のキャリアと両立支援に関する調査」https://www.jil.go.jp/institute/research/2014/119.html、2012年)。

 こうした人たちでないと、日本の事業所(会社でも役所でも)では管理職になれない、ということだとすると、女性の管理職比率が伸びないのは当然です。ということで、この割合を高めるために必要なのは、(ここでは敢えてこう書きますが、女性のエンパワメントではなくて)男性の働き方、あるいは男性標準になっている働き方を、改めることです(シングルや、DINKsな女性たちというのは、日本の事業所では、男性と同様に働ける人たちなのです。もちろん、男性といっても、やはり一定の条件を備えた人たちなのですが)。女性管理職比率というのは、そういう指標なのですが、それを理解している事業所は、民間でも公でも、多くないというのが、現状でしょう。

 

 このことは、私たちの質問への回答にも、よく現れていると思います。男性の働き方について言及しているのは、行田さんだけです。数値目標を掲げるべきだと回答していても、大野候補の場合は、「管理職育成の視点から」ということであり、どうして女性管理職を増やすべきなのか、わかりません。青島候補は、有効だとしていながら、一方で「本末転倒になることもある」と言っており、どちらが言いたいことなのか、よくわかりません。

 

 女性の副知事登用については、私たちは、「埼玉県においてジェンダー平等を進めていくため」と目的を明示しましたが、そのことが理解されているのは、行田さんのみではないかと思います(「男女共同参画と人事管理」という所管を明示しています)。都道府県において、副知事に女性を置くところがみられますが、その仕事が、ジェンダー平等(男女共同参画)の推進であるならば、その仕事が当の副知事の所管になっているのかどうか、また、男女共同参画の担当部署との直接的な関係があるのかどうか、確認しなければなりません。もちろん、任命される女性副知事は、ジェンダー平等についての識見を、持っていなければなりません。